校長から

利尻高校のホームページをご覧いただき、ありがとうございます。

 

 本校は、昭和32年に定時制課程水産科の学校として設置され、現在は普通科と商業科を併設した学校となり67年目を迎える学校です。生徒は、主に利尻町、利尻富士町の2つの町から入学してきており、卒業生は4,600名を超え様々な場所で活躍しています。

 

 自然豊かな利尻島の特徴を活かし、利尻山登山や悠(ユウ)遊覧人(ユウランニン)G(グ)(全島一周ランニング)をはじめとする「ふるさと教育」は、本校の特色ある教育のひとつです。「ふるさと教育」は、大きく4つ分野で構成され、取組状況により、「利高スーパーアルピニスト」「利高ウルトラランナー」「利高スターボランティア」「利高エクセレントスカラー」などの表彰基準を設けており、生徒たちは基準クリアを目指して取り組んでいます。

 

 この春の卒業生は、道内の国公立大学、私立大学、専門学校、民間就職と様々な進路希望を全員が実現して巣立って行きました。過去5年以上、進路獲得率100%を続けています。高校3年間とその後の生き方を見据えたキャリア教育のもと、各種講演会や大学や専門学校のご協力を賜りながら模擬授業や学校説明会を年間複数回実施し、生徒一人ひとりの個性を尊重し、将来の自分を考え、その実現に向けて取組を主体的に進められるよう、深い教育的愛情を持った教職員が一丸となって生徒をサポートしています。

 

 令和3年度からは北海道高等学校遠隔授業配信センター(T-base)の「音楽」の遠隔配信授業を受信し、芸術科目で「音楽」と「書道」の選択ができるようになり、令和6年度も生徒の興味関心にあわせた学びができるようになっています。

 

 今年度も引き続き、生徒の多様な進路希望の実現、ふるさと利尻島の魅力の再発見と探究の成果発信、そして本校での学びを通じて、自己の可能性を広げることができる環境があることを、多くの方々に知ってもらえるよう、このホームページ、そしてインスタグラム、フェイスルブック等で「利高の今」を発信させていただきます。

 

 令和6年4月

 北海道利尻高等学校長 小 林 洋 介

令和6年度入学式 式辞

式 辞

 名峰利尻富士の頂は未だ雪に覆われておりますが、麓の雪の白は徐々に緑に変わり始め、確実にここ利尻島にも、春の訪れを感じることのできる本日、

 利尻富士町長 田村 祥三 様

 利尻町長   上遠野 浩志 様

 をはじめ、多数の御来賓、並びに保護者の皆様のご臨席を賜り、令和6年度北海道利尻高等学校入学式を挙行できますことを、厚くお礼申し上げます。

 ただいま、入学を許可しました普通科16名、の新入生のみなさん、入学おめでとうございます。整然かつ堂々と入場し、凜として呼名に応えるその姿に、本校生としての自覚と、これからの高校生活を充実させようという決意が伝わってきました。「ようこそ利尻高校へ」今日から利高生です。私たち教職員一同、みなさんを心から歓迎いたします。また、保護者の皆様には、お子様の晴れ姿に喜びもひとしおと拝察いたします。あらためてお祝いを申し上げますとともに、本校へお子様をおあずけいただきましたこと、心より感謝申し上げます。

 さて、新入生のみなさん、今から、新しい生活が始まります。真剣に自分自身と向き合い、ほかの何者でもない自分をつくりあげていくことになります。そのスタートにあたって、意識して欲しいこと、大切にして欲しいことを2つ、お話しします。

 1つ目は「自律」です。

 「自律」というのは、自分の自に、法律の律と書きます。中学校の道徳の授業でも出てきますので、覚えている人もいるでしょう。「主として自分自身に関すること」の領域の初段に、「自律の精神を重んじ」から始まる見出しがあります。高校では、これを3年かけて確立・定着させていきます。では、改めてその意味を確認すると、これまで学び得てきた知識や経験に基づく価値や信条など、内的要素に関して、他者から支配を受けず、自分自身で規範を打ち立てた言動がとれることを言います。つまり高校生としては、自らの学びに目標を設定し、その学びへの価値や意義を見いだせること、またそういうひとを指します。

 2つ目に「協働」です。

 「協働」というのは、協力の協に働くと書きます。協働とは、同じ目的・目標のために協力して働くことを言います。高校生にとっては、自分とは異なる考え方にも触れながら、同じ目標のもと、同じクラスの生徒だけでなく、先輩、地域の方々、専門家など、幅広い世代の人々と対話を重ねながら、学びつながるひとつのものをつくりあげる、またひとつのこと成し遂げる経験そのものを言います。

 この2つの考えは、個と全体のどちらも同時に尊重し、どちらも思いやる、利他的・向社会的な共存に発展すると考えられます。それはすなわち、日本教育の方向性を示す教育振興基本計画、の柱である「ウェルビーイング」身体的、精神的そして社会的に良い状態、生涯にわたる持続的な幸福を目指すものであります。

 個としての「自律」、全体としての「協働」を、本校のあらゆる教育活動の通奏低音として、日常的な共通認識、行動規範となっていくよう、繰り返し求めていきます。そして、本校職員一同が、良き学びのサポーターとして、全力で支援していきますので、どうか安心して「自律」と「協働」のチャレンジ、学び、気付き、世界観・価値観の広がりを味わってください。

 結びになります。保護者の皆様、冒頭に「お子様をおあずけいただき感謝申し上げます」とご挨拶しました。3年後に本校不易の校訓である「醇風剛健」に叶う、豊かな心を持って逞しく成長し、地域・地元に貢献できる若者としてお返しできるよう、信頼される学校づくりに邁進していく所存です。是非とも本校の教育活動に対し、ご理解、ご支援、ご協力を賜りますようお願い申し上げます。新入生のみなさんが、本日、この喜びとそれぞれの志を忘れることなく、充実した高校生活を送ることを祈念し、式辞といたします。

 令和6年4月8日

北海道利尻高等学校長 小林 洋介     

「自律」と「協働」

 「自律」と「協働」

 

 どうして「自律」と「協働」

 昨年度末、本校の先生方全員と、少し根本的なテーマに沿った面談をしました。

 「あなたの理想の教師像、こういう教員でありたいという姿は何ですか?」、「生徒に身に付けたいチカラってんなチカラですか?」、「あなたにとって、理想の学校ってどんな学校ですか?」の大きく3つです。今年度新採用の 20 代の先生から、教員歴 10 年以上の中堅・ベテランの先生方まで全員同じ質問です。「なんだか教員採用試験の面接みたいですね(笑)」と、少し照れながらお話しされる方もいました。

  ただ、どの先生方も理想を語るときには目を輝かせ、一言一言を選び、噛みしめながらお話しされていたのがとても印象的です。先生方のお話は、誰もが良識を疑うような考えなどは全くなく、どの思いにも「私もそう思います。」と、同意し頷くものばかりでした。具体的なキーワードとして「自ら考える」「価値観を押しつけない」「社会に貢献」「生徒の可能性」「生徒主体」等々、似たような考え方でも、その先生らしい表現で選ばれた個性的な言葉を聞くことができ、とても有意義な面談となりました。

  そうした先生方の「思い」と私の「思い」、学校を取り巻く社会の現状把握及び将来像、教育基本法に示された理念の実現に向け策定された教育振興基本計画、北海道が目指す教育の基本理念、宗谷管内教育推進の重点、島内3中学校の学校教育目標、本校の校訓、学校教育目標、スクールミッション、スクールポリシー、生徒育成ビジョン等との系統性、親和性、方向性、符合性、互換性を、複数のテキストマイニング、複数の生成 AI を活用して、日常的に生徒も先生も共通の行動指針として意識することができる言葉を紡ぎ出していきました。

  数理的データの平均値として示されるような単純なモノではなく、また私個人の独断でも決してなく、新たなオリジナルワードやキャッチフレーズになるようなこだわりに左右されることなく、聞いたことのある言い尽くされた言葉であったとしても、またすでにどこかの組織が掲げていたとしても、それは我々が求める言葉として自信を持って示すこと、としました。利尻高校に関わる誰もが「やっぱり大事だよね」「そうだよね」と、その本質を理解し大切にしたい意識の共有ができる言葉、ここ一番の余所行き用のドレスではなく、普段着のように、ガシガシ手垢がつくほどに使い倒してほしいものとして吟味した言葉、それが「自律」「協働」でした。

 

 だから「自律」と「協働」

 令和6年4月8日午前の始業式の講話にて、2、3 年生の生徒に「個としての自律」と「集団としての協働」についてお話しさせてもらいました。そして午後からの入学式式辞では、新入生にはもちろんですが、保護者や地域の皆様にもお示しさせていただきました。

                                                                                            「自律」
 「自律」とは、これまで学び得てきた知識や経験に基づく価値や信条に則り、他者から支配を受けず、自分自身で打ち立てた規範にて言動がとれることを言います。つまり自らの学びに目標を設定し、その学びへの価値や意義を見いだせること、またそういう人を指します。

                                                                                            「協働」
 「協働」とは、同じ目的・目標のために協力して働くことを言います。つまり自分とは異なる他者の考え方にも触れながら、同じ目標のもと、クラスの生徒だけでなく、先輩や地域の方々、専門家など幅広い世代の人々と対話を重ね、学びつながるひとつのものをつくりあげる、またひとつのこと成し遂げる経験そのものを言います。

  それでは、この「個としての自律」と「集団としての協働」が積み重なっていくことで行き着く先はなんなのでしょうか。

  「自律」は自ら目標や課題を設定し、その言動の結果に価値や意義を見出すことです。とすれば、多様な文化を認めながら自身で考え導く過程において、自分さえ良ければ良い、という価値観には至ることはありえません。また、「協働」は個々の意見を尊重しながら共通の目標・目的に向かう力動であることを意味します。そうなれば「自律」と「協働」によってもたらされる影響・効果というのは、各個人が自己の利益だけでなく他者の利益も考慮し、相互に支え合いながら共通の目標(利益)を目指すことができること、すなわち【 利他的・向社会的共存 】と言えるのではないでしょうか。そしてそれは、互いの幸福を思いやりながら持続可能な関係を築くことが可能となり、最終的には Well-being (ウェルビーイング = 身体的・精神的・社会的によい状態)つながっていくと展望しています。

  改めて「自律」と「協働」、これを我々利尻高校における日常的な意識付けと行動規範としていきます。

 ・・・「 自律 × 協働 」です。

 令和6年4月25日 

 北海道利尻高等学校長 小 林 洋 介