「自律」と「協働」

 「自律」と「協働」

 

 どうして「自律」と「協働」

 昨年度末、本校の先生方全員と、少し根本的なテーマに沿った面談をしました。

 「あなたの理想の教師像、こういう教員でありたいという姿は何ですか?」、「生徒に身に付けたいチカラってんなチカラですか?」、「あなたにとって、理想の学校ってどんな学校ですか?」の大きく3つです。今年度新採用の 20 代の先生から、教員歴 10 年以上の中堅・ベテランの先生方まで全員同じ質問です。「なんだか教員採用試験の面接みたいですね(笑)」と、少し照れながらお話しされる方もいました。

  ただ、どの先生方も理想を語るときには目を輝かせ、一言一言を選び、噛みしめながらお話しされていたのがとても印象的です。先生方のお話は、誰もが良識を疑うような考えなどは全くなく、どの思いにも「私もそう思います。」と、同意し頷くものばかりでした。具体的なキーワードとして「自ら考える」「価値観を押しつけない」「社会に貢献」「生徒の可能性」「生徒主体」等々、似たような考え方でも、その先生らしい表現で選ばれた個性的な言葉を聞くことができ、とても有意義な面談となりました。

  そうした先生方の「思い」と私の「思い」、学校を取り巻く社会の現状把握及び将来像、教育基本法に示された理念の実現に向け策定された教育振興基本計画、北海道が目指す教育の基本理念、宗谷管内教育推進の重点、島内3中学校の学校教育目標、本校の校訓、学校教育目標、スクールミッション、スクールポリシー、生徒育成ビジョン等との系統性、親和性、方向性、符合性、互換性を、複数のテキストマイニング、複数の生成 AI を活用して、日常的に生徒も先生も共通の行動指針として意識することができる言葉を紡ぎ出していきました。

  数理的データの平均値として示されるような単純なモノではなく、また私個人の独断でも決してなく、新たなオリジナルワードやキャッチフレーズになるようなこだわりに左右されることなく、聞いたことのある言い尽くされた言葉であったとしても、またすでにどこかの組織が掲げていたとしても、それは我々が求める言葉として自信を持って示すこと、としました。利尻高校に関わる誰もが「やっぱり大事だよね」「そうだよね」と、その本質を理解し大切にしたい意識の共有ができる言葉、ここ一番の余所行き用のドレスではなく、普段着のように、ガシガシ手垢がつくほどに使い倒してほしいものとして吟味した言葉、それが「自律」「協働」でした。

 

 だから「自律」と「協働」

 令和6年4月8日午前の始業式の講話にて、2、3 年生の生徒に「個としての自律」と「集団としての協働」についてお話しさせてもらいました。そして午後からの入学式式辞では、新入生にはもちろんですが、保護者や地域の皆様にもお示しさせていただきました。

                                                                                            「自律」
 「自律」とは、これまで学び得てきた知識や経験に基づく価値や信条に則り、他者から支配を受けず、自分自身で打ち立てた規範にて言動がとれることを言います。つまり自らの学びに目標を設定し、その学びへの価値や意義を見いだせること、またそういう人を指します。

                                                                                            「協働」
 「協働」とは、同じ目的・目標のために協力して働くことを言います。つまり自分とは異なる他者の考え方にも触れながら、同じ目標のもと、クラスの生徒だけでなく、先輩や地域の方々、専門家など幅広い世代の人々と対話を重ね、学びつながるひとつのものをつくりあげる、またひとつのこと成し遂げる経験そのものを言います。

  それでは、この「個としての自律」と「集団としての協働」が積み重なっていくことで行き着く先はなんなのでしょうか。

  「自律」は自ら目標や課題を設定し、その言動の結果に価値や意義を見出すことです。とすれば、多様な文化を認めながら自身で考え導く過程において、自分さえ良ければ良い、という価値観には至ることはありえません。また、「協働」は個々の意見を尊重しながら共通の目標・目的に向かう力動であることを意味します。そうなれば「自律」と「協働」によってもたらされる影響・効果というのは、各個人が自己の利益だけでなく他者の利益も考慮し、相互に支え合いながら共通の目標(利益)を目指すことができること、すなわち【 利他的・向社会的共存 】と言えるのではないでしょうか。そしてそれは、互いの幸福を思いやりながら持続可能な関係を築くことが可能となり、最終的には Well-being (ウェルビーイング = 身体的・精神的・社会的によい状態)つながっていくと展望しています。

  改めて「自律」と「協働」、これを我々利尻高校における日常的な意識付けと行動規範としていきます。

 ・・・「 自律 × 協働 」です。

 令和6年4月25日 

 北海道利尻高等学校長 小 林 洋 介