式 辞
冬という季節に生きる、人とその自然風景を切り取り、カメラマンであり映画監督の木村大作氏は、「厳しさの中に美しさがある」と表しました。そして、ここから仰ぐ利尻富士は、その言葉に違わず、厳しさを携えた美しさを感じる一方で、頂上を望む空の青さに、巡る季節を思い、利尻島に来るべき春を感じる本日、
利尻富士町長 田村祥三 様
利尻町長 上遠野浩志 様
保護者と先生の会副会長 長谷川真也 様
をはじめ、ご来賓並びに保護者の皆様のご臨席を賜り、令和6年度北海道利尻高等学校卒業式を挙行できますことに、厚くお礼申し上げます。
ただいま、卒業証書を授与しました普通科19名、商業科6名の卒業生のみなさん、卒業おめでとうございます。気丈かつ堂々と呼名に応えるその姿、とても素敵でした。新たなステージへ巣立っていく決意が伝わってきます。私た ち教職員一同、みなさんを心からお祝いいたします。また、保護者の皆様には、お子様の晴れ姿に喜びもひとしおと、拝察いたします。
さて、卒業生のみなさん、今年度、私が集会等の挨拶で「自律」と「協働」について、努めてふれてきました。生徒、教職員共通の行動規範として大切にしてきた価値観です。今、自分自身を見つめ直したとき、この価値観は目に映っていますでしょうか。おそらく、見えないと思います。でも確実にあります。間違いなく皆さんの中に根付いています。私から卒業生のみなさんへ、最後に「大切なものは、目には見えない」という言葉を贈ります。
フランスの作家サン・テグジュペリの書いた児童文学「星の王子さま」に登場する言葉です。
自分の星にあった一本のバラの花が、唯一無二だと思っていた王子様が、地球にやって来ます。何千本とバラの花が咲いているのを見て、悲しくなりショックを受けます。そこに友人になったキツネが来て言いました。「心で見ないとよく見えない。肝心なことは、目には見えないんだよ。」と。王子様は、自分の星で世話をしてきたバラのことを、愛おしく思い出します。他のたくさんのバラと、外面的には変わりませんが、大切に時間を費やしてきた「つながり」の中で、ひときわ美しく思い出させます。「つながり」は「絆」、と表現できるかも知れません。また「信頼」と言い換えることもできるでしょうか。ここ利尻高校で過ごした3年、島で過ごした十数年の時間が、皆さんと皆さんを囲む全てのヒト・モノ・コトを、かけがえのないものにしているはずです。これから、家族と、友人たちと離れて暮らし、大人として、それぞれの人生を歩むことになっても、ここでの時間が大切に育ててきた自分の価値観は、自分軸としてしっかりと、自身を支え続けていきます。この先様々に出会うヒト・モノ・コト、星の王子様の気付きと同じく、数ではなく、どれだけ心を込められたかが、あなたにとっての、目には見えませんが、確かにある「大切な何か」、という実感で、確認できると信じています。
結びになります。
保護者及びご家族の皆様、本日はお子様のご卒業、誠におめでとうございます。高校の卒業は、お子様の成長を見守る者たちにとっても、大きな節目だと思います。本校を信じ、3年間お子様をお預けいただきましたことに、心より感謝申し上げます。おそらく、本日ご帰宅された後、改めて、お子様方から、感謝の言葉が送られるかと思います。感謝の言葉は、様々な人とのつながり、絆をより深く、より強く、より太くする幸福を運ぶ言葉です。利高生はそういう大切な言葉を、躊躇せず言える生徒です。ぜひ正面から受け止めてあげてください。普段目に見えにくいモノが、やがて実感として得られる、行動として表れです。
お別れの時間が迫っています。時間は目には見えませんが、ちゃんと存在しています。今この瞬間も、みなさんそれぞれが、意味付けし、色付けし、一瞬たりとも、とどまることのない感情と紐付けされ、かけがえのないものとして胸に刻まれていることと思います。
卒業生のみなさんが、ここ利尻高校での学びと、自分自身の成長・成熟を感じることができた今日を喜び、希望にあふれる未来となることを祈念し、式辞といたします。
令和7年3月1日
北海道利尻高等学校長 小 林 洋 介
欠席・遅刻に関する連絡は、安心メールにてご連絡ください。
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本校3年生長森朝君がデザイン・
製作を担当してくれました。
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